2021.01.28

教えて!推進員さんのMYスイッチ

高知県地球温暖化防止活動推進員(以下、推進員)の皆さんに、普段の地域での活動や

推進員になるきっかけとなったエピソードなどをお伺いします。

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いつも穏やかな笑顔を絶やさず、イベントなどでは、困った時に縁の下の力持ちに
なってくれる存在の上田修平(うえた しゅうへい)さん。
今回は上田さんが推進員になったきっかけと、高知の温暖化防止活動に関して実践
していることについて、大変興味深い話をお伺いしました。 

推進員になったきっかけ

もともと自然派で、温暖化防止活動には興味がありましたので、高知県温暖化
防止活動推進センターがソーレの中にあることは知っていました。
当時、地球温暖化防止のための啓発活動を行っている、「地球村」高知の手
伝いをしていたこともあって、推進員の方から誘われたのがきっかけで推進員
になりました。

  

推進員としてのポリシー

温暖化防止活動を行う推進員としての僕のポリシーは、はっきりしています。
自分が肌で感じることを信じるということです。

例えば、「地球温暖化」で毎年の暖冬、猛暑が続いていること。もちろん、それは
そうかもしれないと思っていますが、100%信じているわけではありません。
現在の温暖化についてのデータは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が出し
ています。「IPCCが言うから、それは確かなことだ」と、みんなそう言うんですけ
ど、僕はそういうのは信じないんです。

自分自身が感じることではなくて、他人が言っていることを信じて人に広めるのは
僕はリスクが高いと考えるんです。

つまり、自分の考えじゃないところで動いたらいけないということです。

自分の考えではないことを、ましてやそれを人に伝えるなんて、僕はとんでもないことだと思う。
だから、環境活動にしても、「そこを検証した上でやっているのかな?」ということが僕にとって
は第一関門です。だけど周囲を見ていると自分自身で「発見」や「検証」をせずに、そのまま言わ
れた通りのことを信じたり、あるいは、「教えるテクニック」に走ってしまっている人が、結構多
いんじゃないかなと思うことも少なくありません。

 

推進員として大切なのは活動と生活がリンクしていること

温暖化は地球規模で進んでいて、高知県で暮らす我々にとっても深刻な環境問題です。
そこで、その事実をどう判断して、環境的にどう行動するか決めるのは推進員として大
切なことです。温暖化防止に向けての生活はごまかせないし、主張として温暖化防止を
啓蒙するなら、自分の生活がきちんとリンクしていることが大事だと思うんです。
だって、言うこととやってることがかけ離れていたら、お話しにならないですよね。
だから推進員さんには、まず自分自身の生活を振り返って、そこから始めたらどうかな?
と提案したいんですよ。

例えば、推進員から「環境の知識」を聞かされる相手の立場に立つと、「それは理解でき
るけど、じゃあ、具体的にどうしたらいいの?」と戸惑うことも多いような気がします。
結局は、人それぞれが自分自身で節電や節水、など環境に優しい行動を行うしかありませ
んから、最初から推進員自らが、自分自身の生活例を見せるのがベターだと思うんです。

僕はエネルギーをなるだけ使わない暮らしをしています。移動はCO2を排出しない自転車
をメインで、もちろん節電もしてますよ。まず僕の場合はエアコンは使わない。体は暑さ
や寒さには慣れるんです。

猛暑で「クーラーを使わないと死んでしまいますよ」と言っていますよね。「今更、エア
コンを使わない生活なんてできない」って言われる人がほとんどです。暑さ寒さを我慢で
きないって言うけど、本当にできないのか。
僕は好きじゃないから、冷房も暖房も使わないんです。で、やってみたらできるんですよね。
もちろん僕がとても健康だということもあるでしょう。

照明も夜は基本つけません。夜はLEDのランタン、手動で充電するタイプのを持って、それひ
とつあれば事足ります。朝日と共に起きて、夕日と共に活動を終える。人本来のリズム、元に
戻っただけのことです。

だって、僕なんて、夜照明をつけてたら、したいことをずっと続けてしまって朝になってしま
います。そんなんじゃとてもやっていけないですからね(笑)。

僕にとっては日が暮れて暗くなったら、そこからは「思索の時間」なんです。日暮れからの時
間は、古くは星座の物語や神話を空想する時間だったと言われていますよね。
僕は、未だ実現や検証していない科学技術に頼る考えは、現実的ではないと考えています。

だからこそ、こうやって自分の皮膚感覚で「地球温暖化」について実践していると、実体験か
ら繰り出す言葉が、推進員としての説得力を上げてくれるんです。
自分が経験したことを言える範囲で話せば、大いに納得してくれる人もいるものです。

 

仕事は「芸術家」

僕は東京の建築系の大学に長く籍を置き、それからしばらくは関東で、大きなもの
ではダム工事などの建設現場に入るなどして、他にもさまざまな職種を経験しました。
そして、40歳頃に高知にUターンしてからはケーキ屋さんに就職していましたが、残念
なことに数年で会社が倒産。それからはアルバイトでお寿司屋さんや花屋さんなどを経験
し、そのどれもが実体験として生きています。

「今のお仕事は?」と誰かに聞かれたら、僕は迷わず「芸術家」と答えています。
絵を描くとか、写真を撮るとか、そういうことだけが芸術ではなく、「創造的な生き方を
すること」、つまり、生きていく様が芸術であるようにいようと。僕は30半ばで自分なり
の芸術論を作って、そう決めたんですよ。

 一般的に「芸術」と言うと、「良いもの」とか「優れたもの」という意識を持たれると思
いますが、僕の芸術論での、芸術家とは「思いや発見を訴えかけたり、行動するきっかけ
をつくる試みを続ける人」のことを言うと僕は解釈します。

そういう意味では、芸術への関わりが少ない一般の人でも、実に上手く人間関係や問題に
対処していく素晴らしい人もいるものです。こういった人間の関わり方も、それが創造的
であれば、また「芸術的」だし、この誰もができるであろう生活姿勢を、私は「存在芸術」
と呼んでいます。

 

生活はアート

温暖化防止のために、僕が日頃どんな生活をしているか自分から説明することはありません。
人を見ると、ある程度イメージが湧くものでしょう? 「この人って、こんな感じかな」とい
う印象だったり。もちろん、それが正しいとは限らないんですが、人間っていうのは、自分の
生活が自然に表に滲み出してくるものだとも思うんです。

例えば、この人はどの程度温暖化のことを考えて生活しているのか、配慮しているのかという
ようなことも、普段の生活の端々から見えてくるものです。

でも、そんなことよりも僕自身が大事だと思うのは、同じ環境、同じ時代を生きていて、
そこで「どんな生き方をしているか」ということですね。

僕は冷暖房を使わないからといって、全然我慢なんかしてないんです。夜も照明をほとんど使
わないのは、それによって見つける情報がいっぱいあるからなんです。

目の見える僕たちが、全然触れてない知恵とか世界があるはずで、そこを見つけるだけでも収
穫は大きいんですよ。暑さ寒さに順応できる体を作れば、鍛えられるし、おのずと健康にもな
ります。判断力も健全で信頼性を増すのではないでしょうか。

「暑い寒いは我慢できない、エアコンを使わなきゃいけない」と決めつけずに、自分なりに工
夫してみることです。寒いときには例えば南向きの暖かな窓辺で過ごすだけでも全く体感は違い
ます。こんな風に生活を捉えることができれば、別の世界が見えて来ることもあるんですよね。
そうすれば、今の地球温暖化という状況を打開する方法もきっと見えて来ると思います。

僕の目標は「それを見つけることができる人間」になることです。そのためにも生活はクリエ
イティブであることです。

生活はアートですから、自分の納得した人生を全うできれば良いなと思います。

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いつお会いしても穏やかで笑いが絶えない方。お会いするたびホッとする上田修平さんの
推進員としてのポリシーには、頭が下がる思いがしました。

果たして自分の推進員としての活動は生活にリンクしているだろうかと考えて反省しきりです。
新型コロナウイルスが終息したら、またさまざまなイベントで、上田さんのアートな暮らしか
ら出てくる興味深い話を聞けることでしょう。

インタビューと編集・・・推進員・フリーライター 渡辺 瑠海(わたなべ るみ)