
今回訪れたのは、製造業の現場を支える機械工具専門商社として、長年地域に根付いてきた「TOSAMACHINE」。南国市に事務所を構える同社は、いま「工場総合支援・ものづくりソリューション企業」として、脱炭素・省エネという新たな挑戦を進めています。なぜ今、環境への取り組みに本気で向き合うのか。その背景にある思いと、現場に根差した具体的な取り組みについて、代表取締役社長・宮本隆義さんに話を伺いました。

■地域のものづくりソリューション企業からはじまっている、先進的取り組み
御社の事業内容について教えてください。
現在は、単なる商材の供給にとどまらず、工場が抱える課題に寄り添い、設備・工具・工程改善までを総合的にサポートする「工場総合支援・ものづくりソリューション企業」として事業を展開しています。 現場を知り尽くした商社だからこそできる提案力を強みに、製造現場の生産性向上や品質改善に貢献し続けています。

脱炭素・省エネソリューション事業に取り組むことになったきっかけはなんでしたか。
そうした中、ものづくり企業を支援するコンサルティング会社のサポートも受けながら取り組みを進め、中小企業版SBT(※1)の認定を取得するに至りました。高知県内では、現時点でその意義が十分に浸透しているとは言えないものの、将来的には取引条件の一つとして求められる可能性も見据え、早期に取り組む意義を感じています。
※1SBT:Science Based Target(科学に基づく目標)の略称
2015年(平成27)のパリ協定において世界各国が約束した「地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える努力を追求すること」に基づき、各企業が温室効果ガス排出量をどれくらい、どの期間で削減するか目標設定する取組
認定には目標の設定・提出、承認やそのための準備、継続した達成状況の情報開示が必要となるが、エネルギーコストの削減はもちろんのこと、自社のみならず、取引先のCО₂排出削減にも貢献でき、信頼や企業ブランド価値の向上にもつながる
また、中小企業版SBTは通常のSBTと比較して企業の負担が軽くなっており、中小企業が取り組みやすい内容となっている

自社内では主にどのような取り組みをしていますか。
また、毎月1回の営業会議ではガソリン使用量を発表し、社員全員で現状を共有することで意識醸成を図りながら、日々の行動につなげています。営業エリアは室戸から檮原までと広範囲に及びますが、電気自動車の充電インフラがまだ十分に整っていない現状を踏まえ、南国市内営業を中心にEVを活用しています。今後インフラが整備され次第、水素など次世代エネルギーへの移行を段階的に進めていく考えです。

■快適で働きやすい環境づくりが、脱炭素へとつながる
ものづくり現場の脱炭素・省エネソリューション事業を展開するきっかけはなんでしたか。
一方で、対面営業の価値そのものが失われたわけではありません。むしろ、単なる「差別化」ではなく、顧客ごとに寄り添い方を変える「区別化された営業」が求められている。その中で掲げられていたのが、「物を売る」のではなく、「工場を総合的に支援する」という考え方でした。TOSAMACHINEがこれまで培ってきた現場理解や関係性と重なる部分が多く、その方向性に強く共感しました。
この気づきをきっかけに、2025(令和7)年から工場の省エネ工事を含む「工場総合支援事業」を本格的にスタートし、設備の更新やエネルギー効率の改善といった脱炭素・省エネにつながる取り組みを、今後の事業の大きな柱として位置づけました。事業展開にあたっては、2025年(令和7)11月に高知県から特定建設業の許可を取得し、体制を整え、「これから本腰を入れて取り組んでいこう」という社内の意思統一も図りました。
工場の総合的な支援とはどのような内容ですか。
暑さ対策ではどんなことをしますか。
実際に自社工場でもシャッター内部に施工しており、数値としての温度低下はもちろん、作業時の体感温度が大きく変わったことを実感しています。こうした自社での検証結果を踏まえ、現場の負担軽減と省エネにつながる暑さ対策として工場への導入を進めています。

そのほか工場へ向けておこなっていることはありますか。
検知したエア漏れ量を年間の電気代に換算することで、改善によって見込めるコスト削減効果を数値で示せる点が特長です。 エア漏れを改善することで、電気代の削減だけでなく、設備の無駄な稼働が減り、作業効率や作業環境の向上にもつながります。2025(令和7)年4月からサービスを開始し、現在までに約20件の実績を重ねてきました。小規模な工場でも年間1万~2万円、大きな現場では10万~20万円規模の経費削減につながるケースもあります。
今後は製造業に限らず、食品業界や紙業界など、異業種の工場にもこのサービスを広げていく考えです。 他にも、工場床の延命化やLED交換など、相談いただければ工場全体の環境改善が可能です。
※2 コンプレッサー:周囲の空気を吸い込み、モーターなどの動力で圧縮して高圧の空気を送りだす装置で、工場等様々な現場で使用される
■自然豊かな高知を守り、次世代につなげる
取り組みにあたっての苦労やこれまでで印象に残っていることはありますか。
そうした中で支えになったのが、現場責任者でもある営業本部長の存在でした。脱炭素や省エネを単なる流行ではなく、これからの会社にとって必要な挑戦だと本気で伝え続ける中で、営業本部長が「やりましょう」と声を上げ、前向きに動き出してくれたことは、大きな転機となりました。
どうやって皆さんを説得しましたか。
そんな状況でも流されることなく、凛として存在し続けられる企業であるために、今こそ変わる必要があると話しました。 目先の利益だけでなく、これからの高知、そして次の世代につながる会社でありたいその考えを共有することで、少しずつ理解を得ていきました。

今後の展望をお聞かせください。
工場の環境改善や設備更新は、単なるリノベーションではなく、未来に向けた「投資」。生産性や安全性、そして働く人の意欲を高めるために必要な取り組みだと捉えています。 「打つ手は無限にある。できない理由を探すのではなく、できることを探す」。その姿勢を大切にしながら、これからもものづくり現場に寄り添い、高知の産業を支える存在であり続けたいと考えています。
まとめ
機械工具の卸小売商社として現場に寄り添い続けてきたTOSAMACHINEは、「工場総合支援・ものづくりソリューション企業」として、その役割をさらに広げています。脱炭素や省エネへの取り組みを進めていくことは、受動的な考えから始まったものではなく、今の社会情勢の中で、自分達ができることは何なのかと、能動的に考えられていく中で、地域で暮らす一人ひとりの未来を見据えた、ごく自然な延長線上にある選択でした。
「自然は固定資産税のかからない高知県民の財産なんだよ!」という代表の言葉がとても印象的でした。