2026.03.18

設備最適化と現場力で切り拓く持続可能な製紙会社のあり方とは

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当社は不織布を中心とした機能紙および産業資材の製造を手がける企業です。食品、医療、工業用途など幅広い分野に製品を供給し、それぞれの用途特性に応じた高付加価値製品を展開しています。製造から加工、品質管理までを一貫して行う体制を強みとし、安定した品質と柔軟な対応力を実現しています。
さらに、品質マネジメントの国際規格であるISO 9001(※2)、環境マネジメントの国際規格であるISO 14001(※3)を取得し、品質の確保と環境負荷低減の両立を重視した事業運営を行っています。
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製紙業は、抄紙(※4)や乾燥といった工程で大量の電力や熱エネルギーを使用する、いわゆるエネルギー多消費型産業です。
そのため、脱炭素を推進するうえでは、電力使用量の削減やエネルギー効率の向上が大きな課題となります。
一方で、紙製品は品質の安定性が強く求められる商材でもあります。エネルギー使用量を削減しながら、品質や生産性を維持することは容易ではありません。安定操業と省エネルギーをいかに両立させるか。
それが、製紙業における脱炭素推進の重要なテーマだといえます。

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当社では、省エネルギー設備の導入によるCO₂排出量削減と、焼却廃棄物の削減およびマテリアルリサイクルの推進を、重要な環境施策として位置付けています。
脱炭素に向けた取組の柱は、大きく3つあります。
「太陽光発電設備の設置」
「抄紙設備における真空ブロアポンプの適正化」
「コンプレッサー設備の最適化」
です。
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再生可能エネルギー活用の一環として、老朽化により設置が困難であった本社工場を除く4工場の屋根に、2022(令和4)年度に太陽光発電設備を設置しました。その結果、2024(令和6)年度には全社電力使用量の約5.4%を再生可能エネルギーで賄っています。
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抄紙設備における真空ブロアポンプの見直しによる、大幅な電力削減を実施しました。
真空ブロアポンプは、湿紙や毛布から水分を吸引除去するための負圧を発生させる装置で、脱水効率や製品品質を支える重要設備です。本取組では、実運転時のバルブ前後圧力を実測し、空気流量を基に必要風量を精査することで、能力過剰であった設備を適正能力へ更新しました。
モーター容量は220kWから55kWへと大幅に縮小し、月間電力使用量を約20.7%削減し、年間約1,580万円の電気代を削減することができました。CO₂排出量削減とエネルギー原単位の改善を同時に実現しています。
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コンプレッサー(※6)設備についても負荷・無負荷運転の実態を分析し、インバータ制御方式の最適機器を導入することで、無駄な電力消費を抑制し、継続的な省エネルギー効果を得ています。
加えて廃棄物対策として、焼却処分の削減を目的に分別を徹底することで、再資源化を進めマテリアルリサイクルの推進にも取り組んでいます。
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きっかけは、エネルギー価格の上昇と、社会全体で高まる脱炭素への懸念と取引先等からの要請でした。
電力コストの増加を背景に、エネルギー使用の見直しが明確な経営課題になると同時に、取引先や社会から求められる環境配慮への対応も年々重要性を増していきました。

特に大きかったのは、顧客からの具体的な問いかけです。
「この製品をつくるのに、どれくらいのCO₂を排出していますか」
「紙部品1点あたりの排出量は算出できますか」
こうした質問を受ける機会が明らかに増えました。

社長自らが顧客を訪問する中で、環境対応が評価項目ではなく取引条件になりつつあることを実感するようになり、重油・ガス・電気などのエネルギー使用量を基に、Scope1・2に加えScope3(※7)まで含めた排出量の数値化が求められるようになりました。
こうした状況を受け、当社では環境対策を単なるコストではなく、企業価値向上につながる戦略的取り組みと位置付け、脱炭素への対応を本格化させました。
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省エネルギー設備の導入は、当然ながら初期投資を伴います。そのため、投資効果を定量的に示し、社内全体の理解を得ることが大きな課題でした。
特に現場部門では、操業安定性や品質への影響に対する懸念が強く、導入判断には慎重な検討が求められました。製紙業は連続操業が基本であり、設備変更は生産や品質に直結するためです。
こうした状況の中、各工場では実測データに基づく検証を重ね、設備能力の適正化による省エネルギー効果を「原単位改善」(※8)という形で整理し、工場長を中心に経営層や関係部門へ丁寧に説明。感覚論ではなく、数値に基づく合意形成を進めてきました。
管理部門は、効果算定やデータ整理、資料作成を通じてその説明を支援し、部門間の調整役を担いました。
設備更新後は、操業報告会などの場で省エネルギー効果や運用上の変化を全社で共有し、現場部門と管理部門が一体となった継続的な改善活動へとつなげることができました。
部門横断での連携体制が構築できたことは、印象に残っている点の一つです。
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環境に対する社内の認識は、確実に変わってきています。
「品質のレベルを上げることは、ロスを減らすことにつながる」この考え方が社内に浸透し、不良削減や歩留まり向上といった品質改善が、そのままエネルギーや資材の無駄削減につながるという認識が広がっていきました。
また、5S活動(※9)の徹底により、不要な在庫や余剰資材の削減が進み、現場レベルでの無駄をなくす意識が強まりました。過去には「もったいない活動」としてロス削減をテーマにした取り組みも行われており、環境配慮の考え方は徐々に社内文化として定着していきました。
脱炭素への取り組みは突然始まったものではなく、こうした品質向上や業務改善の積み重ねの延長線上にある。その意識の変化こそが、大きな成果の一つといえます。

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今後は、設備単位での省エネルギーにとどまらず、工場全体でのエネルギー最適化を進めていきたいと考えています。個別設備の効率改善だけでなく、エネルギーの使用状況を俯瞰的に捉え、工場全体で最適なバランスを構築していくことが次の段階です。
あわせて、廃棄物削減やリサイクルの高度化にも継続して取り組み、環境負荷のさらなる低減を図っていきます。マテリアルリサイクルの推進や資源循環の精度向上は、製造業としての責任でもあります。
脱炭素への取り組みを一過性の施策に終わらせるのではなく、無理なく継続できる改善活動として社内に定着させること。そして、持続可能な製造業として地域社会に貢献していくこと。それが今後の目標です。