田中石灰工業株式会社
老舗石灰メーカーが手掛ける持続可能な「資源循環」への挑戦
お話をしてくれた方
田渕 英次さん
田中石灰工業株式会社資源再生事業部 取締役部長
森崎 悟さん
田中石灰工業株式会社執行役員プラスチックリサイクル事業部長 兼 高知プラスチック再生センター長
石灰の製造販売から再資源化・廃棄物処理事業までをおこなう企業
2024年11月に創業130周年を迎える「田中石灰工業株式会社」は、石灰の製造と販売をおこなう企業として様々な事業を展開しており、「地域社会への貢献」を理念に、「人と環境の新しい関係」を築いていくために、プラスチックのリサイクルなど様々な挑戦を続けている老舗石灰メーカーです。そんな田中石灰工業株式会社でお話をしてくれたのは、資源再生事業部 取締役部長・田渕 英次さんと、プラスチックリサイクル事業部長 兼 高知プラスチック再生センター長・森崎 悟さんです。「高知県リサイクル製品」に認定されている、循環資源(※1)を活用した土木資材の製造と、高知市仁井田に設備を構える「高知プラスチック再生センター」でのマテリアルリサイクル業務についてお聞きしました。
※1 廃棄物として捨てられるはずのものを、再び資源として利用できるようにしたもの
縁の下の力持ち!廃棄されたコンクリートが日常を支える。
- 高知県リサイクル製品として、「TS・マカダム」などの様々な製品がありますが、これはどんな製品で、どのようなきっかけで生まれたのですか?
- 今や資源のリサイクルは当たり前の世の中ですが、1990年ごろまでは土木工事で出てくる「コンクリートガラ」という、建物を解体した時に発生するコンクリートの破片や塊などは、全て埋め立てて処分を行なっていたのをご存知ですか?これまでは何の疑いもなく埋め立てていたものですが、時代の変化により、環境保全に対する企業の責任が問われ始めたのをきっかけに、「コンクリートガラをリサイクルし、また建設工事で使いましょう」という動きが見られるようになったのです。私たちの会社では、いち早く時流に乗り、高知県で最初にコンクリートの再利用に着手しました。1989年には「高知コンクリート再生センター」を設立し、これまで鉱石破砕に利用していた技術をブラッシュアップして、廃コンクリートやアスファルトを破砕し、土木資材として再利用できる「再生砕石」の製造に成功しました。
- 私たちの身近なところでも製品は使われていますか?
- 主に、水道や下水道工事の際の埋め戻しなどに利用されているので、皆さんが普段目にすることはないかもしれません。2002年に開催された「よさこい高知国体」に関連する施設建設においては、年間6〜7万tの需要があったほか、1998年以降の土地の安全性や利便性を向上させるための区画整備事業では、必ず使用される資材の一つになりました。皆さんもご存じの高知市の弥右衛門地区の整備・弥右衛門公園の造設や潮江地区の整備には、当社の再生砕石が使用されています。また、電柱のリサイクルもおこなっていて、高知県内の8割の電柱は当社でリサイクルされ、再生砕石へと生まれ変わっているんです。
家庭ゴミが生まれ変わる!プラスチックリサイクル事業
- 再生砕石の普及から少し経ち、次に私たちが着目したのがプラスチックのリサイクルでした。元々、廃棄物の処理はおこなっていましたが、「容器包装のリサイクル制度」が始まるということで事業がスタートしました。2006年には、ペットボトルやトレーといったプラスチック製容器包装のリサイクルを24時間操業でおこなう施設「高知プラスチック再生センター」を設立し、新たな資源循環と資源創造に着手しました。
- 私たちがゴミとして出しているプラスチックごみなどが、また生まれ変わっているということですか?
- その通りです。こちらの施設では、皆さんの家庭からゴミとして出されたプラスチックを素材ごとに分別し洗浄することで、再びプラスチックを作るための原料になる「TSペレット」に生まれ変わらせています。身近なところでは、植物を植えるプランターにも再生プラスチックが使われたものがありますので、皆さんも目にしたことがあるかもしれません。 また高知プラスチック再生センターでは、高知市が年に2回開催している親子清掃施設バスツアーを通じて、皆さんの家庭から出ているゴミがどうなっているのかを実際に見学することも可能です。
マイナスイメージから一転、当たり前になってきたリサイクルという考え方
- 今と昔では、リサイクルに対する世間の意識は変わったと感じますか?
- 180度変わったと感じています。今でこそ分別やリサイクルはとても身近にあるものですが、少し前までは「リサイクル品=品質が良くない」というイメージを持たれがちで、リサイクル品を使用していることを表に出したくないという企業もたくさんありました。しかし、環境に配慮する志向が強まった今では、むしろ名前をどんどん出していきたいという流れになっています。また、リサイクルできないものは作らないという考え方も普及し、「高知プラスチック再生センター」での年間処理量も、2,500tから1,900tへと減少しました。これは、県民のみなさんのゴミ出しに対する意識の変化が数字に現れているとも言えます。
- 最後に、今後の展望などをお聞かせください。
- リサイクルへの考えは、今後緩和されることはないですが、これまでも時代によってリサイクルに求められる要素が変わってきました。その時代時代に寄り添った製品を作り、これまで同様、処理事業に関わることで技術を進化させ、これからも時代を先取りする企業でありたいと考えています。