
飲食店や家庭の揚げ油を原料として作られる、軽油の代替燃料となる環境に優しい「バイオディーゼル燃料」をご存知ですか。今回は、このバイオディーゼル燃料を導入して、排気ガス中の有害物質を削減するとともに、CО₂排出の抑制に取り組んでいる日本航空株式会社高知空港所に伺い、航空会社としての環境への考え方をお話ししてもらいました。語ってくれたのは、日本航空株式会社高知空港所 空港所長の岸田裕史さんと、高知支店 主任の舛野翔さんです。

■航空業界で注目される、【持続可能な航空燃料】とは
まず日本航空様全体で取り組まれている脱炭素やGX(グリーントランスフォーメーション)(※1)について、どのような取組を行われているのでしょうか。
※1 グリーントランスフォーメーション:化石燃料中心の経済・社会、産業工場をクリーンエネルギー(太陽光、風力、バイオマスなど温室効果ガスを排出しない、または抑制できる環境にやさしいエネルギーの総称)中心に移行させ、エネルギーの安定供給・経済成長・排出削減の同時実現を目指す取り組みのこと。
「省燃費機材への更新」
「運航の工夫」
「SAF(サフ)の活用」。
この3つを大きな柱にして展開しています。

「運航の工夫」というのは、日々の運航によるCО₂削減を目指すものです。気象条件に合わせた「飛行経路の最適化」や「機体の軽量化」に加え、さらに、地上走行時に片側のエンジンのみで走行することで、少しでもCO₂を出さない工夫をしています。
もう一つは「SAFの活用」です。 SAF(Sustainable Aviation Fuel)というのは、廃食用油や植物などの再生可能資源を原料として製造されている「持続可能な航空燃料」のことです。最大の特徴は、従来の化石燃料由来のジェット燃料と比べて原料の生産、収集、運搬から燃焼に至るまでのライフサイクル全体でCО₂排出量を60~80%削減できる点です。
さらに既存の航空機のインフラをそのまま利用できるとあって、航空業界全体のCО₂排出量実質ゼロの実現に向けた画期的な燃料として注目されているのです。
飛行機って大量の燃料が必要なイメージがあるので、そこから排出されるCО₂を60~80%削減となると、とても革新的ですね。
■循環型社会への取り組みは、身近なところから始まっている
次に高知空港所での取り組みについて教えてください。高知龍馬空港(以下、高知空港という)で初めて導入された軽油代替燃料(バイオディーゼル燃料)とはどういったものでしょうか。また、どのように活用されているのでしょうか。
これは地域の飲食店や家庭から出る廃食油を事業者が回収して、それを原料にバイオディーゼル燃料を製造しているものです。愛媛県に精製している会社があるため、燃料はそこから供給いただいています。原料となる廃食油は四国中から集まってきたものを使っていると伺っています。

高知の廃食油も使われているということでしょうか。
実は2024年(令和6)12月から四万十市さまと共同の取り組みとして、市役所の中に廃食油を回収するボックスを設置しています。飲食店だけでなく、市民の皆さまから回収した油も高知空港のバイオディーゼル燃料になっているのです。
バイオディーゼル燃料を導入したきっかけは何でしょうか。
当社ではすでに他の空港において作業車両へバイオ燃料を導入している例がありましたので、先行事例を参考に、高知空港でも導入することで脱炭素化を推進できないかと検討を重ねてまいりました。
高知空港では、全国の空港として9番目の導入事例として、お客さまの手荷物や貨物を載せたコンテナをけん引する車両であるトーイングトラクター(※2)2台へのバイオディーゼル燃料の使用を開始しました。
これは単なる燃料の切り替えに留まるものではありません。空港を利用されるお客さまや地域の皆さまに、空港運用における脱炭素の取り組みをより身近に感じてもらう機会にもなると考えています。

導入にあたっての周りの反応はいかがでしたか。
しかし、実際に運用を開始してみると、走行性能や操作性において従来車両との大きな違いはなく、重いコンテナをけん引する作業においても、支障なく運用できていることが確認されています。
導入に向け、苦労したことはありましたか。
こうした取り組みの結果、バイオディーゼル燃料の使用により、年間約2.5トンのCО₂削減を実現しました。これは、杉の木およそ280本が1年間に吸収する二酸化炭素量に相当します。
バイオディーゼル燃料の使用以外に、日本航空が高知で取り組んでいることはありますか。
例えば、航空機が着陸した後の地上走行時には、一つのエンジンのみで走行する「シングルエンジン・タキシング」を行い、燃料消費とCО₂排出量の抑制を図っています。
また、駐機中の工夫として機内電源を確保する際には、航空機に搭載された補助動力装置(APU)を稼働させるのではなく、地上電源設備(GPU)を使用して電力を供給するようにしています。 これにより燃料消費を抑えるだけでなく、空港における騒音や排出ガスの低減にもつなげています。
こうした取り組みに加え、さらなる脱炭素化に向けた施策を常に検討しております。高知空港として実行可能なことを一つずつ、本社と密に協議しながら着実に進めている段階です。

日本航空株式会社高知空港所としての、今後の展望などをお聞かせください。
また、こうした取り組みを空港内だけにとどめるのではなく、地域の皆さまにも広く知ってもらうことを大切にしています。
特に、廃食油の回収やリサイクルを通じて生まれるバイオディーゼル燃料の仕組みを知ってもらうことで、「自分たちの身近な行動が空の環境貢献につながる」という意識が、地域全体に広がっていくことを期待しています。

まとめ
今回のお話で、「バイオディーゼル燃料」という言葉を初めて知った、という方も多いのではないでしょうか。日本航空の高知空港での取り組みは、空港という身近な場所から環境について考えるきっかけとなり、地域とともに脱炭素社会を目指していくための第一歩なのだと感じました。
現在は、愛媛県で作られている「バイオディーゼル燃料」を活用されているとのことでしたが、今後もこうした取り組みが四国全体、そして高知県内の様々な業種の現場へ輪が広がり、地域一体となった脱炭素モデルへと進化して行くと素晴らしいなと感じました。
ちなみに、取材後にバイオディーゼル燃料で稼働している車両のエンジンをかけていただくと、ほんのり天ぷらのような香りが。「廃食油が、こんなふうに活躍しているんだ」と、環境への取り組みをぐっと身近に感じられる、印象的なひとコマでした。