2026.03.26

破棄していたデニムの繊維が 高品質の混抄紙となって生まれ変わる

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弊社は、愛媛県松山市に本社を構えるセキ株式会社です。もともとは印刷や紙を販売する仕事を中心に事業を展開してきました。
近年では、印刷物にとどまらず、HPの制作・ECサイトの構築、さらにイベント企画やWeb企画、そして運用まで含めたトータルの提案も行っています。お客様の課題に合わせて、紙とデジタルの両面からサポートできるのが特徴です。
また最近では、お菓子の箱などのパッケージ分野にも力を入れています。商品の魅力を伝える顔としてパッケージは重要で、環境配慮型素材への関心も高まっている分野だと感じています。
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高知営業所では、主に紙を販売する仕事を行っています。高知営業所は、1976(昭和51)年に開設し、もう半世紀近い歴史があるんです。長く地域に根ざしてきた営業所なので、地元の製紙会社さんや印刷関連の事業者さんとのつながりも深いですね。高知営業所は地元採用が基本で、私自身も地域との距離の近さを大切にしながら営業活動をしています。
今回ご紹介するデニム混抄紙(※1)のように、背景にストーリーや想いがある素材は、単にモノを売るのではなく、その価値をどう伝えるかが大切になります。そこに営業としてのやりがいも感じています。
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私たちはものを作って、売る仕事をしていますが、ただ作ればいいとは考えていません。
印刷や紙の加工では大気汚染や廃棄物など、どうしても環境への負荷が発生してしまいます。そのためにも環境に負荷をかけない、廃棄物を可能な限りリサイクルするなどの仕組みをつくることを大事にしています。
印刷においては大気汚染の軽減を目的として水性フレキソ印刷(※2)を導入し揮発性有機化合物の発生を抑制、印刷工程全体を通してCO₂の発生を抑制することを目的としたグリーンプリンティング認証(※3)の取得、森林保全を目的としてFSC認証(※4)を取得し印刷に使用する紙や販売する紙にはFSC認証紙を採用しています。

弊社伊予工場ではISO14001(※5)を取得しています。太陽光発電システムの導入や廃棄物の分別やリサイクルを徹底、環境配慮型製品の開発など、全社をあげて環境対策に取り組んでいます。また自社だけの活動にとどめるのではなく、得意先様にもFSC認証紙の提案、カーボンニュートラルプリント(※6)やグリーンプリンティングの案内などを実施し、環境への配慮を共通の価値観として共有しています。
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正直なところ、環境に配慮したものづくりは、どうしてもコストが高くなる場合があります。しかし、私たちはそれをマイナスではなく、付加価値として考えています。環境にきちんと向き合って作られたものには、それに見合った対価を支払うべきだという考え方です。
環境への取り組みは、一朝一夕で効果が出るものではありません。だからこそ、無理のない形で、継続していくことが一番大事だと思っています。

高知は自然がとても身近にある場所なので、高知の企業は、意識している・いないに関わらず、環境に配慮した行動を自然にしているところが多い気がします。私たちも特別なことをしているというより、関わるすべての人やものに対して、環境を意識する気持ちを持って仕事をしている、それを大切にしています。
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実は、このデニム混抄紙、私たちが製造しているわけではありません。
私たちがこの紙を知るきっかけになったのは、「じぃんず工房大方」さんから「デニムから紙を作ってみたものの、販路がなくて困っている」という相談からでした。じぃんず工房大方さんとはノベルティ制作に携わったことがあり、以前から知り合いだったので、今回も相談に来てくれた経緯があります。
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デニム混抄紙は、デニム繊維とパルプのみを原料にして作られた紙です。相談に来られたじぃんず工房大方さんは、その名の通り、ジーンズやデニム生地を使った商品を製造する会社で、製造工程の中でどうしてもデニムの端材が出てしまうそうなんです。
量にすると、月に約2トン、1日あたりで約100kg。これだけの量をただ捨てるのはもったいない、何とか活かせないかと考えられていました。
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高知県立紙産業技術センターと土佐和紙製造モリシカさんが中心となって、もともと高知から出る捨てられる素材を使い、繊維を混ぜ込んだ紙を研究・製造していました。さまざまな混抄紙を試作する中で、「これだけいろいろな繊維が使えるなら、デニムもいけるんじゃないか?」という話になり、そこでじぃんず工房大方さんに声がかかったそうです。
じぃんず工房大方さんとしても、端材をただ廃棄するのではなく、PRやブランド価値につながる形で活かしたいという想いがありました。お互いの課題と想いが重なって、タイミングがとても良かったんだと思います。「じゃあ、やってみようか!」と話がまとまったのが、デニム混抄紙誕生のきっかけです。
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紙って、一口に紙と言っても、用途によって求められる性能がまったく違うんです。特に大事なのが強度ですね。メモ用紙にしても、印刷にしても、ある程度の強さがないと使えません。
一般的な紙は木材のパルプだけで作られていますが、そこに異なる素材を混ぜると、どうしても強度は落ちやすくなる。デニム繊維も例外ではなくて、単純に混ぜればいいというものではありませんでした。紙としての良さと、デニムならではの風合い、その両方を活かすための匙加減が一番大変だったと聞いています。混抄紙の場合、一般的にはパルプ9:その他の素材1、多くても7:3くらいが限界だそうです。それでも強度を保つのが難しい。
ところがこのデニム混抄紙はパルプとデニムを5:5という配合で作っています。これは正直、かなりすごいことだと思います。
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はい。デニムの風合いをきちんと残すために、機械抄きでありながら、手漉き和紙の技術を取り入れていると聞いています。効率だけを考えれば、そこまで手間をかけなくてもいい。でも、それではデニム混抄紙の魅力が出ない。紙として使える強度を確保しながら、デニムらしさも失わない。そのギリギリを攻めている感じですね。
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それを可能にしたのは、「なんとかしたい」という情熱だと思います。
高知県立紙産業技術センターの皆さんを中心に、技術的に難しい部分を一つひとつ検証しながら、諦めずに試行錯誤を重ねた結果、今のデニム混抄紙が完成しました。単なる実験で終わらせず、実際に使える紙に仕上げようという強い想いがあったからこそだと思います。
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このデニム紙は、完成した段階で2種類あって、薄いものと厚いものがありました。厚みで言うと、薄い方はメモ用紙くらい、厚い方は画用紙くらいのイメージですね。しかも、一枚一枚、風合いが違う個性がはっきり出る紙なんです。

「これ、何で作った紙なんですか?」
「デニムです」
この一言で伝わるストーリー性は、他の紙にはなかなかありません。

ただ、現実的な話をすると、A4サイズ1枚で約20円と決して安い紙ではない。だから最初は、どう売ればいいのか本当に悩みましたが、メモ帳を作ってみようかという話になり、そこから商品になるまでは早かったです。
製本や印刷は高知の印刷会社にお願いして、原則「オール高知」で作ることにしました。デニム混抄紙は、切れる・貼れる・折れる。求められるものに合わせて、形を自在に変えられるんです。サイズも変えやすく、ページ数やデザインの調整もしやすい。ノベルティとしても使いやすい素材だと感じました。
商品が完成すると、まずはじぃんず工房大方さんのオリジナルメモ帳として2023(令和5)年から販売を始めました。ありがたいことに、高知新聞にも取り上げていただきました。
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一方、厚い方の紙は、ポストカードとして商品化し、ジーンズブランドのビッグジョンさんで販売しています。ビッグジョンさんはデニムが主力ですが、雑貨も大切にしているんです。
「お父さんやお母さんが服を見ている間に、子どもも楽しめるように」という想いで、いろいろな雑貨を展開されていて、その中の一つとしてデニム混抄紙のポストカードを取り扱ってもらっています。

最初は本当に手探りでしたが、まずはメモ帳を作ってみようという判断が、結果的にこの素材の可能性を広げてくれたと思っています。どう売るか分からない紙だったデニム紙が、使い方を変えることで、価値が伝わる商品へと姿を変えたと感じています。

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今まさに話が出ているのが、竹うちわや扇子ですね。デニム混抄紙を使ったうちわで、紙をもっと薄くすれば十分可能性があると考えていて、現在は試作段階です。紙なのにデニムの風合いがある、というのは夏のアイテムとも相性がいいと思っています。
また、すでにある箱にデニム混抄紙を貼り合わせて、デニムらしさを出したいという企業さんもいます。紙そのものを商品にするだけでなく、パッケージ素材として使うという展開も、これから増えていくと思います。
デニム混抄紙は、薄くもできるし、厚くもできるので、受注生産で柔軟に対応できるのが強みです。
実は、これまでにいただいたご相談やご依頼は、ほとんどが県外の企業です。だからこそ今後は、高知の企業さんからの相談も増やしていきたいですし、同時に都市部への売り込みももっと力を入れていきたいですね。高知で生まれた素材だからこそ、全国に向けて発信していきたい。それが、地域の紙産業やものづくりのPRにもつながると思っています。
アイデアはいろいろありますよ。 例えば、ポストイット、マスキングテープ、レターセットなど。デニム混抄紙なら、文具との相性は抜群です。封筒も作れますし、使い方次第でまだまだ新しい商品が生まれると考えています。