
今回お邪魔したのは、佐川町にある木工房ゆうむ。代表を務める木工作家の打木真木さんに、木と向き合う仕事の中で実践している脱炭素の取り組みについてお話を伺ってきました。脱炭素というと、大きな企業や特別な取り組みを思い浮かべるかもしれませんが、日々のものづくりの中にも、自然の循環を意識した取り組みがあるということをお話しいただきました。

■木工がつないだ、高知との縁
木工房ゆうむさんの事業内容を教えてください
もともとは、赤ちゃん向けの動物の積み木などのおもちゃを作っていました。最近はスマートフォンスタンドや、ハリネズミをモチーフにした置き時計など、暮らしの中で使える日用雑貨も展開しています。
材料にはヒノキや高知県産の桜、用途に応じて洋材も取り入れています。木の質感や表情を生かしながら、日常の中で長く使ってもらえるものづくりを心がけています。

高知には移住してきたとお伺いしましたが、どういった経緯で高知へいらっしゃいましたか
デザインの仕事をしながら、職人さんが電動糸鋸(※1)で木を加工する姿を見ているうちに、「自分でも作りたい」という気持ちが強くなっていきました。また、デザインだけでなく、実際に手を動かしてものづくりをしたいと思うようになり、木工の仕事を学びながら3年ほど勤めました。
やがて自分の工房を持ちたいと考えるようになりましたが、群馬県では木材の仕入れが身近ではないことや、住宅地では機械の音など騒音を気にする必要があることが気がかりでした。そんなときに思い浮かんだのが高知県です。仲の良い友人が高知県に住んでいて、以前から気質が合いそうな土地だなと感じていました。実際に訪れてみると、山や森の緑の濃さに驚き、「ここで暮らしたい」と思うようになりました。
そこから子どもを連れて思い切って移住し、香美市で騒音を気にせず作業ができる賃貸物件を見つけ、木工工房をスタートしました。2015(平成27)年のことです。そこから佐川町で古民家を見つけ、2018(平成30)年に現在の場所へ引っ越ししてきました。
※1 電動糸鋸(いとのこ):モーターの力で、きわめて細いのこぎり歯を上下に高速運動させることで、木材やプラスチック、薄い金属などを細かく精密に切断する、卓上型の電動工具のこと。

■木と密接だからこそ生まれた、脱炭素への思い・取り組み
どのような思いで作品作りに取り組んでいますか
また、素材はすべて無垢材(※2)を使うことにこだわっています。長く使えるというだけでなく、時間が経つことで色合いや風合いが変わっていくのも木の魅力だと思うからです。
もともと古民家やアンティークのものが好きなので、使い込まれることで味わいが増していくものに惹かれます。自分の作った作品も、長く使われながら少しずつ表情を変え、愛着を持ってもらえるものになったらうれしいですね。
※2 無垢材:1本の原木から切り出した、接着剤等を使わない天然の木材のこと。
木工を行う中で実際に取り組んでいる脱炭素はなんですか
最初の頃は清掃センターに持ち込み、お金を払って処分していました。ただ、捨てるたびに「まだ使えそうなのにもったいないな」と感じていたんです。木工はどうしても余白が出ますし、節や汚れなど木の癖がある部分は使えずに破棄することもあります。そうした木をそのまま捨ててしまうのは、やっぱり惜しいなと思うようになりました。
そこで、端材を活用する方法として薪ストーブを使えないかと考え始めました。ヒノキは油分が多く、薪ストーブには向かないとも言われていましたが、そういった木材でも燃やせる薪ストーブがあると聞き、導入することにしました。


木と向き合うものづくりのお仕事から見た、自然や脱炭素への思いを教えてください
だからこそ、作品も大量生産ではなく、一つひとつ木と向き合いながら作っていきたいと思っています。例えば、100年かけて育った木を使って時計を作ると考えると、その時間の重みを感じますし、大切に扱わなければいけないと自然と思います。
脱炭素というと、実際に山へ行って木を植えるような取り組みを思い浮かべる方も多いかもしれません。ただ、ものづくりの仕事を通して間接的に関われることもあるのではないかと感じています。
例えば山には、広葉樹から針葉樹までさまざまな木があります。そうした多様な木をきちんと使い、無駄にせず活かしていくことも、結果的に脱炭素の一端を担うことにつながるのではないかと思っています。
林業に関わる方とのつながりもあると伺いました。どのようなきっかけだったのでしょうか
現在は山の手入れをしながら林業に取り組まれているのですが、その方がクラウドファンディングを活用して本を出版される際、返礼品として木の作品を作ってほしいと声をかけていただき、制作に関わらせてもらいました。木を扱う仕事をしているので、林業の現場で活動している方とつながる機会をいただけたのはとてもありがたい経験でした。
※3 自伐型林業:森林を所有していない場合であっても、山林を借用し、又は施業を受託するなどして小規模な林業を行うこと(令和2年度森林・林業白書より)

返礼品が木の作品ということは、出版された本の内容も木にまつわるものだったんでしょうか
また、木工をしていると、どうしても使いやすい木材に目が向きがちですが、山にはもっと多様な木があるんだと、改めて見つめ直すきっかけにもなりました。
そういう木をうまく活かしていくことができれば、森の循環にもつながりますし、間接的に脱炭素にも関わっていけるのではないかと思っています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
もともと一つひとつ手作業で作っているので、これからはさらに手のかかるものにも取り組みながら、質の良い作品を作っていきたいと思っています。
木としっかり向き合いながら、自分が本当に作りたいと思えるものを、これからも真面目に作り続けていきたいですね。

まとめ
木工工房が手掛ける脱炭素の取り組み、いかがでしたか?端材を薪ストーブの燃料として活用するという、私たちの暮らしにもどこか身近に感じられる取り組みです。
その背景にあるのは、ただ「もったいない」という思いだけではなく、長い時間をかけて育った木を大切に使い、無駄にせず活かしていくこと。そして、森が循環していくように、ものづくりもまた自然の循環の中にあるという考え方です。
木と向き合いながら一つひとつ作品を生み出す打木さんの姿からは、日々の仕事の中にも脱炭素につながる取り組みがあることを教えてもらいました。自然の恵みを受け取りながら、無理なく循環の一部を担っていく。そんなものづくりのあり方が、これからの時代のヒントになるのかもしれません。