2024.11.11

地産地消を実現!山の資源を山道へ戻し活かす「塊状かいじょうクリンカアッシュ」

株式会社グリーン・エネルギー研究所

地産地消を実現!山の資源を山道へ戻し活かす「塊状クリンカアッシュ」

お話をしてくれた方

永野 正朗さん

株式会社グリーン・エネルギー研究所 代表取締役社⻑

植木 明洋さん

土佐清水市森林組合 森林整備課⻑

再生可能な資源を活用し、地域の林業・木材産業振興に貢献する企業

今回お話を伺ったのは、「⾼知県認定リサイクル製品」に認定されている「塊状(かいじょう)クリンカアッシュ(※1)」を製造されている株式会社グリーン・エネルギー研究所の代表取締役社⻑・永野正朗さんと、同製品を実際に使⽤している⼟佐清⽔市森林組合の森林整備課⻑・植⽊明洋さんです。製品誕⽣のお話から、どうして塊状クリンカアッシュの取扱いを始めたのか、実際の使⽤感などをお⼆⼈にお聞きしました。

     

※1 クリンカアッシュ:石炭を燃焼させた時に発生する石炭灰のうち、ボイラーの底部に落下した石炭灰の塊を回収し、脱水・粉砕した灰のこと

️「塊状クリンカアッシュ」ってどんな製品?製品誕⽣のきっかけは?

「塊状クリンカアッシュ」は、⼭道などの道に敷いて、⾞が滑ることを防止する製品です。 私たちの会社は、⽊質バイオマス(※2)を使⽤した発電事業を⾏っています。⽊や枝を燃やすことで発電をしているのですが、発電の過程でバイオマスボイラーで木材を燃焼させた時に、炉床に木灰が溶けて多孔質な塊状になった軽石のようなものが生成されます。それが、「塊状クリンカアッシュ(以下、クリンカアッシュ)」です。
クリンカアッシュよりもさらに細かな木灰を農業⽤の肥料として開発していたのですが、これまでは廃棄していてた、少し⼤きな塊状のものを何とか製品化できないかと思い、関係各所と試験を重ねながらできた製品がクリンカアッシュです。製品の特徴としては、軽量で透⽔性に優れているので、地域の林業に携わる方達の安全を守るために、滑りやすい森林作業の⼭道に敷くのにぴったりです。また、製品化することで、それまで処分にかかっていた費⽤も抑えられるようになりました。

※2 再生可能な生物由来の有機性資源(化石燃料を除く)のことで、間伐材や造材で生じた木くず・原木・枝葉などの木材が含まれる

開発の過程で懸念点はありましたか?また、どのように乗り越えましたか?
やはり「イメージ」の部分ですかね。もともとは産業廃棄物として処理していたものを加⼯して製品化するので、「産業廃棄物を道に敷くのか」というマイナスイメージがあるのではないかなと。
ですが、公的機関と連携して実証試験を進め、環境への安全性もしっかりとクリアできるようにしました。それに加えて、実際に使⽤してくださる方々の「声」にも助けられています。

環境にやさしく、林業の未来も守るクリンカアッシュ

利用するにあたって、とても安価で、作業道も安全に通ることができて、とても良いなと思いました。私たち森林組合は、普段から⼭が仕事の現場です。場合によっては、コケや雑草が生えていたり、雨が降ってぬるぬるした⼭道などが作業道になることがあります。今までは車が滑ることを抑えるために再⽣砂利(※3)というものを仕⼊れて敷いたり、作業道を作った際に出てきた砕石を集めて敷いたりしていました。再⽣砂利はコストも⾼く、「何かいいものがないかな」と思っていました。そんな時、近くの現場で作業をしていた方から、「クリンカアッシュ」の話を聞いて、私たちも「じゃあ、試してみよう」と。

※3 建設現場などで出たコンクリートやレンガなどの廃棄物を砕いて再利用したもの

導⼊するにあたって気になることはありましたか?
林業の世界では、「作業道に敷く資材のコストを抑えたい」という同じ課題があったので、コストの部分ですかね。でも、クリンカアッシュの値段は、再生砂利の4分の1のコストに抑えられるということでびっくりしました。まずは安いということがとてもありがたかったですね。価格が安ければ、「じゃあ、試してみよう」と、試験的に導入することへのハードルも低いですよね。
クリンカアッシュは、もともと捨てていたものを製品化しているので、⽣産コストがほとんどかからないんですよ。クリンカアッシュ製品化に向けた林業事業者の方へのヒアリングのために私も時々現場に伺う機会があって、その時に「普段使⽤しているものは⾦額が⾼い」ということも聞いていましたし、ぬかるんだ⼭道を林業事業者の方と一緒に⾞に乗って⾏く時にはやっぱり「もっと安全に安⼼して作業ができるようになったらな」という思いもあったので、製品化への思いも強くなりました。
作業道の上に10〜15cmくらいの厚さでクリンカアッシュを敷くと、全然違いますよ。四駆の自動車じゃないと⾛れなかった道が、⼆駆でも⾛れるようになりますからね。

山の資源を山に返す、森林資源の地産地消

※4 林地に残った木材や、製材したときに残った木材

私たちは普段、幡多地域の林業事業者や個⼈の⽅から⽊材を仕⼊れています。地元の⼭で切られた⽊材を、発電の燃料として、燃やす過程で最終的に排出された資源をクリンカアッシュとしてまた⼭に返すという仕組みで動いています。そうすることで、また安全に林業事業者さんや⾃伐林家(※5)の⽅々が安全に⼭で作業ができるようにと思っています。「森林資源の地産地消」ですね。

※5 おもに自分の持ち山で、伐採から搬出、出荷まで自力で行なう林家のこと

今までは、切られた後にもそのまま⼭に捨てられていた枝葉などの残材がありましたが、クリンカアッシュが砕けて木々の栄養になるというサイクルができました。そのまま⼭に残されて腐らすだけだったものを株式会社グリーン・エネルギー研究所さんへ持っていくことで、「燃料にもなり、クリンカアッシュにもなる」いいですよね。
捨てられていた「残材」に付加価値をつけることができたし、⼭もより綺麗になるんじゃないかなと思います。
あとは、私たちの林業活動で出た枝葉を株式会社グリーン・エネルギー研究所さんへ持って行き、その帰りにクリンカアッシュを積むことで、輸送コストをぐんと抑えることもできる。まだ現時点ではできていないですけど、そういうことにもこれから取り組めたらなと思っています。

「近くに株式会社グリーン・エネルギー研究所さんという企業があって嬉しい」と話す植⽊さん。環境に良いということはもちろん、「地産地消が実現する取組」というのも、塊状クリンカアッシュの愛される点かもしれませんね。