
お話をしてくれた方

近澤 京平さん
株式会社近澤建設 取締役・スーパーソル担当

濱崎 香江さん
有限会社土佐通信 企画開発
ガラスをリサイクルして新たな価値を生み出す
皆さんは普段ゴミとして回収されたガラスがどうなっているかご存知でしょうか?
多くのガラスはキレイに洗浄されて、再び溶かしてもう一度ガラスとして生まれ変わっており、その量は全体のおよそ7割と言われています。残りの3割は、断熱材や骨材(※1)など工業製品として生まれ変わっています。今回取材をしたのは、工業製品の3割の中の1%に当たる「スーパーソル」という製品です。
※1 コンクリートやモルタルを作る際、セメント・水と一緒に混ぜ合わせられる砂利や砂の総称

耳馴染みのない「スーパーソル」とはどのようなものなのでしょうか?
高知県で唯一スーパーソルを製造する株式会社近澤建設の取締役/スーパーソル担当・近澤京平さんと、スーパーソルを使って加工・販売している有限会社土佐通信の企画開発・濱崎香江さんにお話しを伺いました。
️「スーパーソル」とは?製品誕生のきっかけは?

- 「スーパーソル」とは、100%廃ガラスを原料としている軽量発砲資材で、その特徴は軽量・多孔質・透水性・保水性にとても優れています。その特徴を活かして、土木、緑化、建築、農業、水質浄化といった幅広い用途があります。こちらが実際のスーパーソルです。持ってみてください。
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軽石のような質感で、とても軽いですね。
スーパーソルを製造しようと思ったきっかけはありますか?
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当社で製造を始めたきっかけは、社長の興味本位でした。
高知県内にガラスリサイクル施設はほとんどなかったため、高知県内の事業者は香川県や徳島県、大阪府まで廃棄されたガラスを運搬し、再利用していました。そのため、高知県内にガラスリサイクル施設ができることで「多方面から需要があるのでは?」と考え、情報収集するうちにスーパーソルに出会いました。実は、その頃にはすでに有限会社土佐通信さんは県外のスーパーソルを取扱っていたんですよね。
- そうなんです。当社は船舶の通信機器事業を展開する会社としてスタートし、避難所までの経路を示す街路灯の開発や、避難誘導灯といった防災事業もおこなっています。そこで、県外の防災展示会でスーパーソルを製造していた沖縄の会社に出会い、お話しを伺う中でスーパーソルに惚れ込み、2019年ごろから製品を仕入れて広める取組をおこなっていました。その後、近澤建設さんがスーパーソルの製造事業をスタートすると知り、地元である高知県の企業から仕入れたいと思い、取引がスタートしました。
- スーパーソルの製造には、どのようなメリットがありますか?
- スーパーソルの製造は、ガラスリサイクルの中でもCO2(二酸化炭素)の排出量が少ない点です。新たにガラス瓶を作る際と比べて、スーパーソルを製造する際の排気量は約1/3まで減ります。また、溶出試験(※2)もクリアしており使用後は土として取扱いができるので、産業廃棄物扱いにならず、家庭菜園として土に混ぜ込むことも可能です。
※2 焼却灰、土壌などから、どのような有害物質がどの程度溶け出してくるのかを調べるためにおこなう試験
廃棄されたガラスからできる「スーパーソル」の製造過程とその苦悩とは?

- 当社が取扱っているガラスは大きく2つに分かれており、収集運搬業者が集めた事業所のものと、市町村の家庭ごみから出たものです。スーパーソルの製造過程は、パン作りの過程と似ていると言われています。施設の敷地に廃棄されたガラスを集めてきて、まずは機械で細かく砕きます。それからカレット破砕機というガラスを細かくする機械で破砕し、異物を手作業で取り除いてさらに細かい粉状にします。細い粉状にしたものを少量の添加材を混合したのち、焼成発砲させて製造します。

- 確かにパン作りの過程に似ていますね!製造で苦労したことはありますか?
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実は安定した製品を作れるようになるまでとても苦労しました。
まずは、ガラス発砲資材事業協同組合(※3)の先輩である岡山県の有限会社ランドベルさんの協力を得て、製造に関する研修をおこなっていただきました。ただ、これまで手がけてきた土木事業と産業廃棄物事業と異なり、製品を作るという経験がなかったため、各機械のメンテナンスや調整など初めてのことだらけでした。同じように製造工程を踏んでも、気候や時期によって出来上がりが違うものができてしまいました。特に雨季、乾季などは湿度も違うので1年かけて微調整を繰り返し、やっと今の製造のノウハウを確立しました。
※3 廃ガラスのリサイクル資材・スーパーソルの製造販売に参画された企業の思いをのせて、2016年5月にガラス発泡資材事業協同組合を設立され、スーパーソルを製造している全事業者が登録している組合
- 有限会社土佐通信さんではスーパーソルをどのように利用していますか?
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当社は二次加工がメインです。
当初は農家さんへ赴いて、水はけの悪い畑などへの使用を提案していましたが、結果がすぐに出るものではないため、実績やデータを取るのに時間がかかりました。そこで、並行して二次加工にも着手し始めました。
スーパーソルの粉を熱で焼き固めて、コースターやアロマストーンとしてOEM(※4)でオリジナルグッズを作っています。水をしっかり吸収するコースターは、人気の商品です。
※4 「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の略で、他社から仕事を受け、他社ブランドの製品を製造すること

「スーパーソル」の利用と普及は?

- 実は、スーパーソルは土木工事でも使われています。土木工事の際に軽量盛土工法(※5)という工法があります。軽量盛土工法にすることで、土の圧力を軽減できるため、一般的な盛土を使えない現場で使用ができるようになります。普通の土が水の1.8倍の比重に対して、スーパーソルは0.4倍ととても軽いのがメリットです。
※5 軟弱地盤・地すべり地帯・急傾斜地など、従来の土を使った盛土工法が困難な場合に、軽量な資材を土の代替材として使用し、構造物や周辺環境に影響を与えないようにする盛土の施工方法
- 一般の方でも興味がある方がいそうですが、一般の方に向けた工場見学はされていますか?
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はい。大人向けにはもちろん、学生さんに向けても見学をおこなっています。
見学に来てくださった方からは、ガラスリサイクルの方法にびっくりしたり、ちゃんとガラスを分別しようという意識をあらためて持ってくれたりと、嬉しい反応がたくさんありました。
新しいアイデアで「スーパーソル」のニーズを増やす!
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船舶通信事業のときとはまた違ったお客様との出会いがあります。
例えば、「板場の包丁台として使いたい」「土に還るのでペットの骨壷として利用できないか?」など、思わぬお問い合せをいただくので、多方面にアンテナを張ってスーパーソルの可能性を広げたいです。
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有限会社土佐通信さんがスーパーソルの存在を広めてくださったおかげで、農家さんからの反応はとても早いと感じました。
また、軽いうえに種子などが混入していない無機物なので、石材店からは敷き砂利として利用したいという声もあります。さらに、樹脂舗装にも向いているのではと、注目度が上がってきていると感じています。
沢山の可能性はあるけれど、まだまだスーパーソルを活かしきれていないので、他企業とのマッチングや新しいアイデアでさらにニーズを増やしていきたいです。
スーパーソルの製造を通して、ゴミとなるガラスがまた生まれ変われることを知りました。
「『私たちは捨てればゴミ、活かせば資源!』という思いでスーパーソルを作っています」という近澤さんの言葉がとても印象的でした。